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コラム

「色の名前のふしぎ」

ここでは、私たちが日々、革を扱っていて、おもしろいなと思ったことや、ふしぎに思ったことなどを、ご紹介していければと思います。

 サライ商事では、世界各国から革を輸入しています。それらの革の名前や色の名前は、基本的には、タンナーが名付けた名前をそのまま使っているので、イタリア産の革の名前は、イタリア語だったりします。
例えば「ネロ」。これはイタリア語で黒という意味です。お客様にわかりやすいように黒と言ってはいますが、タンナーからの伝票では
「Nero」と書かれています。同じように「ビアンコ」は白、「グリージオ」はグレー、「キャメロ」はキャメルのイタリア語読みです。
 このあたりはわかりやすいのですが、例えば日本語でも「黄土色」とか「朱鷺色」みたいに、なんとかの色だよ。という名前が、イタリア語でももちろんあります。
 例えば、プルーニャ。これは英語の「パープル」ですが、単に紫色というのではなく「プラム色」のことです。
(ちなみに紫色を表すのは「Viola」。これは楽器のヴィオラとも同源で、「ヴァイオレット(Violet)」の語幹です。厳密にいえば、すみれ色のことを指します)
 また、わかりやすいのだと「オリーバ」は、オリーブの実の色(少し暗めな緑色)のことです。

そんな中で、最近、これって何だろう、と思ったのが「ボッティリア(Bottiglia)」という色。英語では「ボトル」という意味です。実際に見てみると、オリーバよりも少し明るい緑色です。ボトルといえば…ペットボトル? とは思わなくても、コーラの瓶は透明だし、お醤油の瓶も透明だし、お酒でも瓶ビールは茶色だしと、この明るい緑色がボトル色って、どういうことなんだろう、と少し考えてしまいました。

わかったのは、翌日の夕食の時です。お店でちょっといい赤ワインを頼んで、中身を空にした時。そのボトルの色こそ、まさしく「Bottiglia」の色でした。そう、イタリアはワインの一大産地。ボトルといえばワインボトルです。長期熟成が必要なワインが、光でダメになってしまわないように、茶色や緑色などの色ガラスのボトルが使われているのです。
それらには赤ワインが入っていることが多いので、外から見ると、まるで黒のように見えてしまって、瓶が緑だということに思い至らなかったのでした(余談ですが、南イタリアでは、白ワインに対して赤ワインのことを「黒」ともいうそうです)

 色の名前ひとつとっても、その国の人の見ているもの、生活や文化が感じられて、面白いなと思った出来事でした。